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アメリア・アレナスだけではなく・・・鑑賞教育を推進する素晴らしい実践家:濱口由美(HAMAGUCHI Yumi)先生の研究発表会+シンポジウム(報告)

 振り返ってみると、Japan Art Education Networkと称しているわりには美術教育や芸術教育にダイレクトに繋がる情報が少ないサイトですね・・・と、自嘲モードの編集長が言う。すると、窓からみえる冬空に、そろそろ足の踏み場も無い自宅の書斎を片付けて、電気ストーブを入れないとなあなどと考えていた編集局員が、取り繕って、「表紙のデザインも替えたところですし、ここらで少し真面目な記事も誌面に載せておきましょうか」と言った。まあ、こんな詰まらぬ小芝居から書き始める必要もないが、見出しと中身が異なることばかり、書き散らしてきた反省が頭をもたげてきたので、言い訳がましい導入を置かざるをえない気分になった。さて・・・・

 2008年11月15日(土曜日)に、美術科教育学会西地区研究会が徳島県立近代美術館の3階講座室において開催された。<創造を生涯の友にする「鑑賞遊び」というテーマで徳島市内の公立小学校にお勤めの濱口由美(はまぐち ゆみ)教諭が二つのパートにわけて、彼女のオリジナルな方法論である鑑賞あそびの目的と手順について詳しく論じてくれた。

 彼女によれば、鑑賞遊びとは、「作品とのかかわり方を習得する場」と「自立鑑賞の場」を連動させる活動方法であり、遊びの特性であるルールや相互理解の深まりに着目して名づけたものである。同様な名前の教育実践があったとしても、それらとは意味の異なるユニークな方法論だ。彼女の鑑賞遊びは、常に教室での実践の裏づけをもつ。逆に言えば、空理空論ではない、検証可能な理論性を核に据えているということだ。

 当日は、西地区研究会の研究発表とパネルディスカッションに先立ち、同美術館のアトリエ室にて、「鑑賞シート活用授業研究会」が開催され、濱口由美先生の鑑賞遊びの考え方と方法論に基づく鑑賞授業の題材化と授業実践について、徳島県内の小学校・中学校・高校の先生方が自らの成果を持ち寄り、ディスカッションが行なわれた。「鑑賞シート活用」という言葉が付されているのは、徳島県立近代美術館発行の鑑賞シートに、彼女の考え方と方法がそのまま活かされており、そのシートを活用した授業実践を互いに報告しあうという会の趣旨に基づいている。今回の「鑑賞シート活用授業研究会」では、この鑑賞シートにおいて取り上げられている、現代の木版画家、吹田文明の作品をめぐる「鑑賞遊び」の授業について研究討議が行なわれた。

 いずれの授業報告も素晴らしい内容の濃い鑑賞活動が展開されたという報告ばかりであり、濱口由美先生の「鑑賞遊び」の思想と方法論の素晴らしさが確認されたかたちとなった。

 午後の研究発表では、創造的な鑑賞活動がいかなる方法で可能となるか、過去から現在までの取り組みを写真やビデオ映像を交えて、その方法論についてわかりやすく整理し、すべて公開していただいた。そのなかでは、子どもたちがクレーの絵の前で行なった自分たちの詩の朗読会や武家屋敷(原田家・国の登録有形文化財)のなかで開催された子ども自らが自分たちの作品展を展示・解説しながら、鑑賞遊びという学びの導入を図るという意欲的な実践が紹介された。

 濱口由美先生の鑑賞遊びは、地域に密着して展開されているものの、決してローカルなものではない。むしろ、その基本は、日本の美術鑑賞教育を大きく飛躍させるベクトルを内在する力強い思想性にあり、表面的な「絵についてのまなび」など、爆砕してしまうほどの起爆力に満ちた、アートの日常化を目指す骨太の教育実践なのである。

 アメリア・アレナスもよいのだが、日本にもこうしたユニークな取り組みを行なっている鑑賞教育のスペシャリストがいることを一人でも多くの方々に知らせたいと思い、「アメリア・アレナスだけではなく・・・」という確信犯的にキャッチーなタイトルをつけてみた。

 それにしても、彼女の授業は本当に感動的である。子どもたちは自分の意見をしっかりと語り、ひとの意見をまっすぐに捉える。そういうコミュニケーションの密度がきわめて高いのである。教室にはいつも笑いが溢れ、子どもたちの表情には、意欲が漲っている。

 笑顔が素敵な、なかなかチャーミングな先生なので、映像的な映えもよいでしょう。どこかの局の敏腕プロデューサーかディレクターのかた、濱口由美先生の感動的な鑑賞遊びの番組を作ってみては如何ですか? 図工の授業を通じて、子どもたちが成長する感動のドキュメンタリーができあがるはず。

(当日の研究発表とパネルディスカッションについては、別の機会に紹介します。なお、濱口由美先生は、教育美術誌が主催する歴史ある教育論文賞の受賞者です。また、今年度は、6月28日に東京家政大学で開催された美術科教育学会東地区研究会にて、首都大学東京の長田謙一氏、筑波大学の直江俊雄氏らとともに、「造形活動と思考・言語の形成」について、教育実践を踏まえて研究発表をなさっています。発表や講演の名手として頭角を顕している人であり、各県の教育委員会・地域の教育研究組織などが主催する講演やシンポジウム、そして助言・指導者として最適の人材です。)

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